フレキシブル基板を印刷技術を使って製造 プリンテッドエレクトロニクスの業界で先端を走り続ける。
エレファンテック株式会社(旧:AgIC株式会社)の清水氏は、高校2年生時に4bitCPUの設計を行うなど、電子回路設計歴は長い。東京大学大学院情報理工学研究科で工学修士を取得後、ボストンで働いていた前職時代に、折しも学生時代の恩師がMITメディアラボでプリンテッドエレクトロニクスデバイス技術の研究を行っていることを知る。当時から、印刷技術を使って基板を製造できればコストが大幅に圧縮できると言われており、2030年までには、世界で流通する基板の半数以上が印刷系に変わっていくだろうという予測が打ち出されていたが、当時、実用化出来ているところはどこもなかった。もし実現できたら、業界的にかなりのインパクトがあるし、自分自身も設計者として、電子回路が安くなること、更に、製造のフレキシビリティが上がるということは、とてもありがたいと感じ、研究と実用化に取り組み始めた。
当初は、紆余曲折の連続。性能、耐久性に問題があり、通常の基板製造手法からの置き換えは難しく、導電インクを使った学校教材用製品や、ギフト用製品などで市場への認知度向上と浸透に励んだ。今では、技術力も向上し、インクジェット印刷・銅めっきによるオンデマンドのフレキシブル基板の製造サービスを展開している。産業用途としてFPC(フレキシブル基板)を中心に、受注も増加し、今年秋には、中量程度の量産、月数百台(量産)生産能力、月産1000平米まで対応できる工場に移転する予定である。(取材当時2017年7月)
Quadceptを選定した理由
モータなどの制御基板、センサー、温度をセンシングする基板など、社内の製造プロセスに関わる基板は全て内製作業で設計しています。会社を立ち上げた当初は、メンバーそれぞれが手慣れたCADを使用していましたが、やはり社内で統一していこうということになり、その際、候補に上がったのがQuadceptです。
Quadceptの良いところは、直感的で使いやすいUIと豊富なライブラリ。マニュアルを見なくても、すぐに使い始めることができ、一点ものを簡単かつ早く作ることができるのはとてもありがたいです。ちょっと試作してみようといった時のファーストムーブが早いのが嬉しいですね。また、機能面では、面付け機能や束配線はとても便利です。一方で今は実装されていませんが、バージョン管理の機能があると嬉しいので、今後に期待しています。
10年後も、プリンテッドエレクトロニクスの業界で世界トップを保つため、技術の先端を走り続けたい。
印刷技術の業界について言えば、アメリカのスタートアップなど数社取り組んでいるところはあるが、どこも実用化に苦労している。また大手基板メーカーも取り組んでいるが、今からゼロベースで製造ラインを立ち上げるのは時間が掛かる。エレファンテックの場合、金属インクの特殊性はもちろん、自社で開発しているインクジェットやフィルム自体の特殊性もある上、めっきプロセスも内製化している。例えば、金属のナノ粒子をインクジェットで印刷すると、薄い成膜しかできない。製造工程の特性を考慮した上で無電解銅めっきを既存の10倍の速さで適正に制御しながら成長させることにより、数μmの厚みの銅配線を実現している。ケミカルの調合も含め全てのプロセスを自社で内製しているため、独自で研究開発したノウハウが全工程に惜しみなく注がれている。
今、印刷系の基板製造技術に関してはエレファンテックが世界のトップを走っているが、これから大手メーカーがどんどん参入してくるだろう。そのために今の他社との差をキープし続けなければならない。世界トップの地位を守り続け、10年後には、あらゆるところに自分たちの技術が入っている、そのような世界を目指しているのがエレファンテックだ。
「今、基板の製造技術が大きく変わろうとしています。自分たちは、プリンテッドエレクトロニクスの技術で、そのイノベーションを、中国や台湾からではなく日本から起こしていきたいと思っています。そのためにも、一般的に腰が重たいと言われている日本のメーカーさん、エンジニアさんに積極的に当社の技術を使ってもらいたいんです。」
清水社長の力強い言葉が胸に響いた。
会社概要
社名 | エレファンテック株式会社 |
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代表者 | 清水信哉 |
所在地 | 〒104-0032 東京都中央区八丁堀四丁目3番8号 |
設立 | 2014年1月(2017年9月4日にAgIC株式会社からエレファンテック株式会社に商号変更) |
Web | https://www.elephantech.co.jp/ |
フレキシブル基板を印刷技術を使って製造。プリンテッドエレクトロニクスの業界で先端を走り続ける。