マルチエネルギーに対応し、世界を支える
世界の三大ガソリン計量機メーカー、タツノ。
ガソリン計量機、水素ディスペンサーの開発、製造、販売、メンテナンスを行う。自動車燃料への取り組み、貯油・給油施設の設計、施工、自動車インフラの普及などに大きく関わる。事業開始から常に国内シェア60%以上を保持し、海外においても、東南アジアを中心に75カ国以上に輸出し、グローバルに展開。常に最先端の技術を製品に組み込み、業界をリードしてきた。
その多岐にわたる製品数は計り知れない。
近年、環境保護と脱石油の動きから、自動車業界やエネルギー業界は、大きな変革を遂げようとしている。タツノは、環境対応製品の開発や水素をはじめとした新エネルギーへの対応を世界に向けて行っている。
日本が世界に誇るブランドだ。
長年続いた負の連鎖に葛藤
大川 氏:
歴史ある企業には魅力がありますが、一度根付いた運用の慣習を変更することは容易ではありません。開発部では電子CADの運用において、目先の回避策を講じた運用慣習により、非効率な運用が定着していました。ライブラリ資産を構築できず、業務プロセスを変更するにも相当な労力が必要だったため、皆が不満を募らせていました。
- ライブラリ運用
- 回路図面上のライブラリに直接属性情報を入力したため、ライブラリをコピー&ペーストで流用すると、属性情報が誤ったまま使用される人為的ミスが発生
- 部品表上のみで属性内容を変更し、図面上と部品表で情報が一致せず、正確な情報が不明瞭
- 部品調達
- 半導体不足の影響により、委託先との代替部品の調整や入手待ちによる開発のリードタイムの長期化が慢性化
- 部品調達依頼時は代替部品候補の洗い出しとリスト化が都度必要
- PCB設計の外注コスト(費用・設計指示書の作成時間)
- 部品作成時間は、1つあたり1週間
- 少しの修正でも外注コストが発生し、依頼時には設計指示書の作成時間も必要で、リードタイムや労力がかさんだ
以前のCADにはライブラリ管理機能はありましたが、運用改善だけで社内を動かすのは難しく、負の連鎖に葛藤を感じていました。
Quadceptの導入効果
業務プロセスの悪習慣と外注との時間コストにメスを入れる
大川 氏:
そのとき、CAD保守費用の高騰をきっかけに、CAD検討する契機が生まれ、長年溜めていた不満を解消するため、改善のチャンスが訪れました。
1.ライブラリ運用の改善
この課題は、Quadceptの機能を用いた運用改善と若手リーダーの菊地氏が開発した部品表作成のシステムを取り入れることで改善。 Quadceptでは、回路図上で部品属性を変更しないよう、マスタの部品に属性情報を登録、部品作成時に部品連携を用いて、オンライン商社から価格や在庫を取得し、属性情報の取り込み機能を活用することで作業を短縮。ライブラリ資産の構築が実現。
2.部品調達業務の改善
Quadceptの部品商社連携でCoreStaff、Mouser、Digi-Key、Chip1Stop、RSの業界最大手5社の値段を比較し、合計することで、部品検索時間を短縮。また、部品表に調達希望部品と代替部品候補を表現することで、委託先との部品調達に必要なコミュニケーションコストを削減。
3.PCB設計内製化によるコスト改善
PCB設計外注の技術者高齢化や外注コストの増加をきっかけに、試作基板の一部内製化を実施。1つあたりの部品作成時間は1週間から5分程度に短縮し、外注費のコストカットとリードタイム短縮に貢献。
また、ノイズ対策は自社で検証できるため、内製化したことにより評価重視の業務プロセスへ改善された。電流の流れを意識したベタの作成や製造上のチェック方法など、設計ノウハウの蓄積と向上を実現。設計後すぐにELEFAB(Quadceptの製造実装サービス)で試作できるため、1秒でも早く電気を入れたい設計者の心を掴んだ。
4.学習環境が揃っているため、学習コストがかからなかった
内製化において、部品作成へのノウハウ不足が課題となったが、Quadceptのサポート体制により克服。Quadceptのフォーラムやマニュアルの検索は、ちょっとしたフレーズでも引っかかり、パッドの参考寸法などコンテンツが豊富なため、自己解決できる環境が揃っていた。
さらに、英語表記の言語設定やマニュアルが用意されているため、外国人労働者にも親和性が高く、スムーズなCAD習得ができた。
自主的に運用改善を
重ねていける開発チームへと変貌
新たな出発を迎えたことをきっかけに、社内連絡用のSlackにチャンネルを設け、初期導入時の体制を強化。以前の悪習慣への不満をバネにみんなで取り組んでいます。
海老江 氏:
Quadceptは、マニュアルが豊富で自分で調べる環境が整っており、習得しやすいです。操作でわからないことがあれば社内の専用Slackで質問し、知っている人がQuadceptのオンラインマニュアルを共有し合い、みんなで協力しながら習得しています。
もし社内だけで回答が見つからない場合は、私が窓口となりQuadceptへお問い合わせをし、いただいた回答をSlackで共有しています。回答は迅速で、設計作業が滞ることなく進めることができるため、とても助かっています。スムーズに設計ができる環境づくりを強化するため、都度業務改善を相談し、適切なCAD運用ができるよう努めています。
大川 氏:
部品表作成の効率化と外注との依頼方法を改善するため、代替部品候補を部品表に出力するツールを開発しました。Quadceptの部品属性に代替部品を登録しており、属性表出力機能により代替部品を出力します。その後、開発したツールで表内の代替部品型番(複数行のセカンドソース)をひとつのセルにまとめることで、カスタマイズした部品表へ変換し、意図した表現を実現しました。
菊地 氏:
もし何か運用課題があれば、運用手法が定着する前に”今”解決しておきたい。CAD運用の過渡期だからこそ、決め事をせず、みんなと相談して、より良い運用に改善していっている。嫌だけどやらないといけない業務に対して”やらせるべきでないこと”があれば、自動化する仕組みを作って行きたいと思っています。
たとえば、データ破損時に即応するためのリスクヘッジとして、Master Database(共有データベース)のバックアップについては、ハード設計グループの各個人のノートPCにバックアップするプログラムを作成しました。
全員のPCが同時に破損しない限り、最新のデータベースを誰かが復元できるため、この案が採用されました。はじめてのソフトの開発にも関わらず、システム部署にもほとんど頼らず自力で調べて、改善をやり遂げることができました。
次世代につなぐ『変革』の意志
大川氏が若手に積極的な運用改善案の提示を促すことで、改善への意欲が芽生え、運用改善や検証に取り組む文化を醸成。5年間の業務経験を培った菊地氏をはじめとする若手は、それぞれにリーダーシップを発揮し、「次の世代にいいものを残していきたい」との胸の内を語った。
また、ソフトとハードを分けない設計視点や改善すべき点の本質をとらえ推進する力強さや、改善の術となる技術を高める姿は、大川氏から菊地氏へと受け継がれ、次の世代にも受け継がれようとしている。
誇り高い技術者の姿勢が日本を牽引してきたように、ひとりひとりが『変革』の姿勢を持ち、更なる発展を支えている。
会社概要
社名 | 株式会社タツノ |
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代表取締役社長 | 龍野 廣道 |
所在地 |
〒108-0073 東京都港区三田三丁目2番6号 |
創立 | 1911年(明治44年)5月1日 |
Web | https://tatsuno-corporation.com/jp/ |
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